ラスベガス-ベガスダウンタウン-フリーモント

アメリカ販売員として忘れられない「クレイジーすぎたお客さん」

ラスベガスに住んでいると言うと、びっくりされる事がよくありました。笑

確かに接客業をしていて、酔っぱらった方、パーティーから飛び出してきたようなハイテンションな方、二日酔いの方などはまれなお客さんではありません。

そしてアメリカでは外国人になる私が、「クレイジー!」と反応したくなる事がありました!笑

今回はいくつかあるお話の中から、アメリカしかもラスベガスという海外で、日本人の私が出会ったお客さんのエピソードを紹介します。

「これがラスベガスか!」とつくづく実感した、映画のような体験談です。

1.スーパーセレブ

ラスベガスでは、ブリトニースピアーズやジェニファーロペスが定期的にパフォーマンスをしています。

また、ホテルのクラブに有名DJやセレブゲストが来たり、マイクタイソンがサイン会をしたり。

有名セレブがクラブを貸し切り、バースデーパーティーをすることも!

私の働いていたお店にも、私でも分かる有名ハリウッド俳優さんがご来店されたり。

「すごい所だラスベガス」と思うような話を、いろいろと聞くことはありましたが、ある夜のこと、私の身にも起こりました。

ご来店

静かな店内に、かなり軽装の男性のお客様がご来店されました。

入店され、私が挨拶をするとフレンドリーに話して下さりました。

他のお客さんと何の変わりもなく、店内をゆっくりと見て歩いていました。

しかし1つ不思議だったのは、その方と一緒に入店された方が、私たちが話すところをジーっと見ていたこと。

店内には入口付近に椅子があったのですが、そこに座りながらとにかくジーっと…

これ見せて

入店されてから間もなく、気になるものが見つかったようで「これ見せて」と言われました。

それと同じ商品の違うスタイルを見て、「こっちも見せて」

「うーん、どっちがいいんだろ」

私に聞いているというより、自問自答されているという感じでした。

「まだ小さいんだよね」

それを聞いて私は驚きました!!

そのお客様が見ていた商品は子供用ではなく、いままでその商品を小さなお子様に買われた方はいません。

最新のiPhoneくらいするお値段のものを、小さな子に買うこの男性。

「すごい価値観の人だ」

なんて思いましたが、いつも通り接客を続けました。

お土産なんだ

でも、お誕生日とか何か特別な日のプレゼントなのかな?

それでも小さな子へのプレゼントにしては「すごい高価」と思いましたが、「世の中には色んな人がいるんだ」

と、庶民の私は考えました。笑

「ちょっと電話してもいい?」

すると男性は「なんか買ってくるって約束しちゃったんだよね」と私に言いました。

どうやら、これはプレゼントではなくお土産とのこと!!

そしてお客様は「ちょっと失礼…」と、カウンターをはさんだ私の目の前で、誰かとフェイスタイムをはじめました。

スピーカーフォンにされていたので、電話からの女性の声が店内に響いていました。

ディスカウント

5分ほど電話で話して、迷っていた2つのスタイルのどちらにするのか決まったみたいです。

電話を切ると、「じゃあこれ頂くよ」

「買って行って気に入らなかった困るから、確認したかったんだ」と。

私が返事をしていると…

「あぁ、これいくら?」

こんな聞かれ方はいままでありませんでした。

お客様がはじめて商品を手にとったときや、買おうか悩んでいるときに値段を聞かれることがほとんどです。

「これ頂くよ」と言ってから値段を聞くなんて、ものすごく珍しいこと。

実はお客様とお話中にまったく値段を聞かれなかったので、最後の最後に聞かれたとき「そんなするの?」なんて言われないかなと、少し思っていました。

値段を伝えると、「あぁそう」とあっさり。笑

私が商品を男性の手から受け取ると「ディスカウトとかないの?」

ディスカウントはないと伝えると、「Oh come on」と笑いながら言われました。笑

賢くお買い物をしようとするこのお客さんに好感を持ちました。

あの男性が動き出す

お会計の際、「あのジーッと私たちを見ていた男性」にそのお客さんがお声がけをされました。

さっと席を立って、こちらに来る黒づくめの男性。

そして持っていたセカンドバッグをお客さんに渡しました。

「自分でカバン持ち歩かないんだ…」と、はじめて見る光景に驚きました。

そこで、遅咲きの私はなんとなく「この人は普通の方ではない」と思いました。笑

小さな子への高価なお土産、値段を聞かないなどサインはいくつもあったのですが、ここはラスベガス!

それくらいであれば「珍しいな」という感じで、特に気に留めることもありません。

しかしお財布も持たず、付き人がバッグを管理するこの男性。

このケースはまれすぎて、気になってしまいました。笑

ブラックカード

お客さんから渡されたのは、アメリカンエクスプレスのブラックカード。

アメリカで販売員をしていれば、かなり稀ですが、たまに見かけるセレブなカードです。

真っ黒なだけでなく、普通のクレジットカードの素材と違い、分厚く重いです。

その高級感と存在感は、他とはまったく違います。

そのカードを機械に通すと、その感触が「ザクッ!」となんとも爽快なのです。

アメリカンエクスプレスのブラックカードを渡され、高価なお土産にも説明がついたような気がしました。

「IDを確認させていただいてもよろしいですか?」

クレジットカードでお支払いされるお客さんには、必ず聞かねばならない質問です。

「俺のID確認するの?」と半笑いで聞かれました。

そう言われ、「知らなきゃいけないほど有名な方なの??!」と汗ばみました。笑

でも、一緒に働いていた同僚も認識していない様子。

決まりなのでなんて言いながらIDを待っていると「頼むよ~」いう感じで「Come on」とまた言われました。笑

名前を確認させて頂きましたが、それでもやっぱり何もピンときませんでした。

同僚がひと言

そのお客さんがお店を出る少し前に、休憩から同僚が戻ってきました。

そのお客さんの顔がちらっと見えたらしく、お客さんがお店を出られた後「あの人名前なんだっけ?」

「見たことある人なの?!」と思わず聞きました。

クレジットカードのお店控えをみて、「あー!思い出した!」

そして彼がどれほどすごい人かということを教えてくれました。笑

「しかも〇〇の元旦那さんだよ」

その〇〇さんは、誰もが知る、こんな芸能音痴な私でも知っているスーパースターでした。

ラスベガスではホテルの中を歩いているだけで、有名歌手やスポーツ選手に出くわすことがあります。

他の州でも働いていましたが、「ラスベガスは独特だな~」と改めて実感しました。

2.リアル映画「ハングオーバー」

映画「ハングオーバー」を観たことありますか?

ラスベガスを舞台に、お酒の勢いで男性たちが体験するかなりぶっ飛んだエピソードが盛り沢山のコメディ映画!

「こんなこと現実には起こらないよー」

なんて思ってしまうような、かなりクレイジーな内容でおもしろい映画です。

しかし!

映画の世界を実際に体験してしまった人に、私は出会ってしまいました。

ご来店

1人の若い男性が、今にも泣きそうな表情でお店にご来店されました。

「助けてもらえませんか?」

感情が体からあふれ、ヘトヘトなご様子だったので、店内奥にある座ってお話ができるところへご案内しました。

こんな風にお店に入店される方は始めてだったので、何があったのだろうと不安になりました。

失くしてしまった

「信じられないんです!」

「本当に映画の世界のようなことが起こったんです!」

「これはまさにリアルハングオーバー」

興奮ぎみで、かなり早口なお客様のお話を、私は真剣に聞いていました。

「ここラスベガスで、彼女にプロポーズするはずだったんです」

「指輪をポケットに忍ばせてあって…」

そこで私もハッと、何か嫌な予感がしました。

「でもめちゃくちゃ飲んで、よっぱらっちゃって…」

「気づいたら指輪がなくなってたんです」

無理をして高価な指輪を買ったこと。

このラスベガス旅行もプロポーズのために、さらに無理を重ねて計画したもの。

全て洗いざらい話して下さったのですが、聞けば聞くほど心が痛くなりました。

きっとラスベガスにきて気分も上がって、プロポーズということでナーバスにもなっていたんでしょう。

「俺は本当にバカだ」

「でも、ここでプロポーズしないといけないんです」

「そのためにラスベガスに来たんです」泣

ハングオーバーの代償

失くされた指輪はとっても高価なものだったそうですが、同じような高いものは買えないとおっしゃいました。

でも彼女に似合う良いものがほしい。

彼が見て気に入った指輪を見せるたびに、「あー高すぎる」

その度に自己嫌悪に陥られて、見ていてとても辛かったです。

「なんて馬鹿なことをしたんだ…」

でも、なんとか気に入るものを選ばれました。

すると彼がぼそっと…

「彼女が気に入らなかったらどうしよう」

プロポーズ大作戦

もしそのようなことがあれば、お店に戻ってくるようお伝えしました。

でも彼がこんなにも真剣に選んだものを、彼女が気に入らない訳がない!

そんなことを心では思っていました。

サイズを変えてしまうと交換ができなくなってしまうのですが、ラッキーなことにその指輪は彼女のサイズ。

彼女がプロポーズを受け入れ、指輪を気に入ってくれますように…!!

「戻ってくるかもしれませんが、その時はまたよろしくお願いします、笑」

そう言って彼はお店を去っていきました。

そして彼がお店に戻ることはなかったので、プロポーズが上手くいったことを確信しました。

刺激的な職場

お酒を手に持ったまま来店される方。

酔っぱらったままお買い物をされる方。

スロットマシンで儲けたお金をもってご来店される方。

ラスベガスでは、他では味わえない貴重な体験をさせていただきました。

最初は驚きましたが、だんだん慣れて、その刺激を楽しめるようになりました。

ユニークな職場、大変勉強になりました。